冬の東京は北風運用が多く、ここ最近は34L/Rばかりに着陸をしていたのですが、先日珍しくまた運悪く16L/Rの運用時間帯に被ってしまい都心上空ルートを飛行しました。
16Lはthresholdが奥に移動しているとか、新しい3.25°用のPAPIが運用されているとか、気流悪くなり易いといった、ふわっとした情報をなんとなく覚えていますが、確実に運航を行うために再度のreviewが必要でした。
34RのLanding Distance Available (以下LDA) ならば9843 ftと体に染み付いてしまっているのですが、16LのLDAなど確認しないと分かりません。
RNAV 16Lはその他にもトラップが多く不満も多いのですが、やはり都心上空を飛行できる感動に勝るものないので好きなアプローチの一つではあります。
ここでは、再度「移設滑走路末端」について羽田空港を例にまとめ、注意点とその対策を残します。
移設滑走路末端 (DTHR : Displaced Threshold) とは
実物を見ると分かりやすいので羽田の34Rの航空写真を掲載します。
滑走路末端標識(白いバーコード)が端では無く、中程に移設されています。
羽田空港では34Rだけではなく、16L、16Rの滑走路末端も移設されています。
他の空港でパッと思いつくところでいうとシンガポールも20Rで移設されています。
パイロットの相棒JeppesenのAirport Chartに書いてある滑走路長っぽい数字を、何となく滑走路の長さとして捉えている人も多いとは思いませんが、再度あの数字のlegendについて確認します。Jeppesenのwebsite (AIRPORT-2)で誰でも確認出来ます。
"Physical length of the runway which does not include stopways, overruns, or adjustments for displaced thresholds. Shown in feet with the meter equivalent included at International Airports."との記載があり、あの数字にはdisplaced thresholdを考慮していないことが確認できました。
では、着陸や離陸に使用可能なdistanceがいくつなのかを確認しましょう。
あまり日常運航でAIPを見ることは無いとは思いますが、AIPにも各空港にDECLARED DISTANCESという記載があります。
TORAとは、TAKE OFF RUN AVAILABLE、TODAはTAKE OFF DISTANCE AVAILABLE、LDAはLANDING DISTANCE AVAILABLE、さらにASDAとはACCELERATE STOP DISTANCE AVAILABLEであり、ASDAまで記載されています。
羽田の場合は、LDAのみdisplace分を引いた値になっています。
実体験からの移設滑走路末端 (DTHR : Displaced Threshold) の注意点と対応策
- VisualでAImingに向かってpathを合わせようとすると、自機が高いように錯覚する
- ILSやV/Sを確認しながらのComposite Flightを心掛ける
- Displaced Thresholdを考慮していないRunway長をLDAと勘違いし、auto brake settingを誤り予定していた場所からrunway vacate出来ない(最悪の場合はoverrun)
- Approach Briefingなどで口頭確認を行いコクピット内の共通認識をとる