巡航高度から目的地飛行場に向けて降下します。
"Recleared direct SPENS, cross SPENS at FL220"
"Descend and maintain 13,000"
管制機関から降下の指示を受けたとき、降下するべき高度は明確に指示されますが、
大体の場合において降下率(通常1000fpmの降下率は最低求められている)はパイロットの判断に任されてますし、場合によっては降下を開始する時期がパイロットの判断に任されることもよくあります。
何も考えずに管制機関に言われたままに降下をするのは誰でも出来ますが、
出来るだけ燃料を消費せず(Idle thrust)に降下したり、揺れる高度の通過時間を極小にしたかったり、また、巡航中の大きな位置エネルギー、運動エネルギーを着陸した時点でゼロにする必要があったりと、パイロットのセンスが大きくフライトに反映される場面です。
降下計画における変数は、すぐさま思いつくままに並べると下記の通りとなります。
tail or head wind, use of anti-icing, fuel management, turbulence, gross weight, atc, etc.
そこでパイロットはstabilizedな進入を行うために、
KAIHOを4000 ft, 180 ktsで通過する、ARlONを5000 ft, 210 ktsで通過するといった具合に、
ある位置を通過する際の高度と速度の目標を立てて飛行機をコントロールしていきます。
その目標点への降下の仕方は、大別してflight path angleで考える方法、rate of descendで考える方法の2通りがあります。
flight path angle
「Ground Speedに5を乗した値が3°パスの目安のvertical speed」と界隈ではよく言います。
これは、Ground Speedをa (kts)としたときに
3°パスとなるvertical speed (fpm : feet per minutes)
= a × (6076/60) × tan(3°) = 5.307a
となることから、5.307を5と近似していることによります。(6076/60は、kts = nm/hourからfpmへの単位換算)
ここから、Ground Speedに何を乗するとvertical speedを求められるのか計算してみましょう。
Angleに応じたvertical speedを求めるためにGround Speedに何を乗するか
a × (6076/60) × tan(1°) = 1.768a
a × (6076/60) × tan(2°)= 3.536a
a × (6076/60) × tan(3°) = 5.307a
a × (6076/60) × tan(4°) = 7.081a
a × (6076/60) × tan(5°) = 8.860a
a × (6076/60) × tan(6°) =10.64a
フライトしながら使用するために、ざっくりと以下のように目安を持ちます。
1°パス | × 1 |
2°パス | × 3 |
3°パス | × 5 |
4°パス | × 7 |
5°パス | × 9 |
6°パス | × 11 |
実際には、機種にも依りますがFMCが計算するFPAも参考にできます。
また、乗務機種がどの程度のangleで最大降下可能かを考えます。
私の乗務機種における経験則やmaker manualに依る最大降下angle ( degree )
これは機種によって異なるので各自で把握してください。
現在の私の乗務機種ですと、gross weightやairspeedに依りますが経験則やmaker manualに依ると、下記のような降下率となります。
without speed brake | with speed brake | |
above 10,000 feet | 2000 fpm | 4000 fpm |
below 10,000 feet | 1000 fpm | 2000 fpm |
これを安全サイドにabove 10,000 feetを350 kts、below 10,000 feetを250 ktsのspeedと仮定して、このときの降下率を計算すると以下になります。
| without speed brake | with speed brake |
above 10,000 feet | 3.3° | 6.4° |
below 10,000 feet | 2.3° | 4.5° |
Ground Speed の奇数倍をするだけの簡単な計算で求まるangleと、乗務機種の最大降下angleが求まったところで、
処理するべき高度と残距離のangleが分かればどのように降下をするべきか明確になります。
残距離からangleに応じた獲得高度
距離b (nm)を何度のパスで降りると何ft降下するかということを考えてみます。
b × 6076 × tan(1°) = 106b
b × 6076 × tan(2°) = 212b
b × 6076 × tan(3°) = 318b
b × 6076 × tan(4°) = 425b
b × 6076 × tan(5°) = 532b
b × 6076 × tan(6°) = 639b
× 6076はnmからftへの単位換算です。
こちらもフライトしながら使用するために、以下のように目安を持ちます。
1°パス | × 100 |
2°パス | × 200 |
3°パス | × 300 |
4°パス | × 400 |
5°パス | × 500 |
6°パス | × 600 |
以上の考え方をまとめると、
- 目標地点までの必要時間を求める
- FMCを頼る (FPA)
- 処理したい高度と残距離からangle を求める( × n )
- 求めたangleとground speedから必要なvertical speedを求める( × 2n-1 )
- 求めたvertical speedに合わせてpitchとpowerをcontrol
rate of descend
ここまでと同様に、ある地点を通過する際の高度と速度の目標を立てたときに、
その地点まで何分掛かるかを考え、単位時間あたりに降下する高度(vertical speed)を求めて、求めたvertical speedに合わせて飛行機をcontrolする考え方です。
目標地点まで何分掛かるか
FMCの計算するETAを参考にするのが簡単でしょう。
FMCに頼らないのであれば、Ground Speed ( kts )に応じた目安( nm / mins )を持つと良いでしょう。
Ground Speed ( kts ) | Ground Speed ( nm / mins ) |
---|---|
150 | 2.5 |
200 | 3.3 |
250 | 4.2 |
300 | 5.0 |
350 | 5.8 |
精密にやりたいのであれば上記の数字を使っても良いですし、
私は割と適当な性格なので、安全サイドに以下のように目安を持っていて、
例えば現在のGSが170 ktsだとしたら200ktsとして考えて、1分間に4nm進むといった具合に考えています。
Ground Speed ( kts ) | 私の1分間に進む距離の目安 ( nm / mins ) |
---|---|
150 | 3 |
200 | 4 |
250 | 5 |
300 | 6 |
350 | 7 |
必要なvertical speedはいくつか
あとは、算出した必要時間で降下するべき高度を割って必要なvertical speedを求めて、飛行機の性能の許すようなコントロールをします。
以上の考え方をまとめると、
- 目標地点までの必要時間を求める
- FMCを頼る
- 現在のGSを5で割って求めた1分間あたりの進出距離を使う
- 求めた必要時間から必要なvertical speedを求める
- 求めたvertical speedに合わせてpitchとpowerをcontrol
まとめ
巡航高度から3°で降りてくることにこだわるパイロットや、thrustを一度も足さないことにことにこだわるパイロットがいたりと、降下計画はパイロットによって考え方が異なるので、自分が良いと思った方法を取り入れてください。